ショック!!な報告

せいじつ会計

2010年06月22日 14:09




こんにちは。
鏡でございますm(__)m

先週の土曜日は、所属している中小企業家同友会の政策委員会の会合がありました。
その中で、大学の先生をお呼びして、「DATAからみる熊本県の経済と産業構造の特徴(1989→2008年)」というタイトルで講演をしていただきました。

で、かなりのショックな内容が報告(以下一部抜粋)されました。



まず、
【1.全国における熊本経済の位置】ということで、熊本県と全国との比較データが報告されました。
(2006年水準)
経済のウェート  1%
人口       1.5%
総生産      2006年5兆7086億円名目ベース 全国の約1.1%
         47都道府県の中で25位九州全体・・・一般的に10%経済
熊本県の経済規模の伸び率  1989→2006年(20年間) 1.42(全国1.51)
              1996→2006年(10年間) 0.99(全国1.01)


2.熊本県の民力水準・・・・平均24位
・5つの総合指数(基本指数、産業活動指数、消費指数、文化指数、暮らし指数)全体

*上位指数・・・農業産出額 7位、林業産出額 7位、公民館数 8位、病院数 12位、保育所 13位、刑法犯認知件数 16位、コンビニ数19位

*下位指数・・・都市公園面積 36位、工場総数 36位、一般公共事業費 31位、預貯金残高総額 30位、工業製品年間出荷額 30位


■熊本県の民力水準の特徴
①全国有数の農業県農業林業関係の高さ
②医療・福祉・病院関係の強さ
③製造業関連の弱さ(ただし、上昇傾向にある)
④公共事業の弱体化
⑤貯蓄力の弱さ

■過去20年間(1989→2008年)の民力の水準の動き
・順位の増加指標・・・林業算出額10→7位、水産業32→26位、工業製品出荷額32→30位、商店年間販売額26→24位、郵便物引受数21→20位
・順位の減少指標・・・人口22→23位、世帯数20→23位、県民所得23→25位、国税徴収決定額29→32位、農業産出額6→7位、工業総数34→36位、預貯金残高総数28→30位、一般公共事業費22→31位、書籍雑誌年間小売販売額19→24位

3.熊本県一人当たりの民力水準・・・平均37位
上位指数→病院数7位、保育所8位、農業産出額8位、コンビニ数9位、林業算出額10位、公民館数12位

*下位指数→新聞頒布数46位、書籍雑誌年間販売額44位、預貯金残高総数42位、工場総数42位、開通加入電話数41位、国税徴収決定額40位地方税収入額40位、一般公共事業費40位、民営事業所数39位、都市公園面積39位、県民所得38位、工業製品年間出荷額38位、電灯年間使用料37位

■熊本県の民力水準の特徴
①医療・福祉・病院関係の強さ
②暮らし指数の高さ
③全国有数の農業県農業林業関係の高さ
④消費指数の低さ
⑤文化指数、産業活動指数の相対的低さ

⑥県水準に近づいた製造業関連指標


ここまできて、「県民所得の低さ」と「預貯金残高総額の低さ」がショックですね(>_<)


そして、
【2.人口と就業構造の特徴】として、
1)人口に見合った生産構造か?・・・人口→全国の1.5%なのに、総生産→全国の約1.1%
2)人口は微増
 1990年 183.8万人   ⇒  2005年  184.0万人
3)少子高齢化の同時進行 
 年少人口   1990年19.4% ⇒ 2005年14.3%
 老齢人口   1990年15.4% ⇒ 2005年23.7%
 生産年齢人口 1990年65.1% ⇒ 2005年61.8%(全国37位)
 出生率    2007年1.54人(全国3位 1位沖縄1.75、2位宮崎1.59)
4)就業人口にみる若年層の流出
 15-19歳、20-24歳で人口減少・・・進学・就職で県外へ。人口流出。
 2008年高等学校卒業者17,177人・・・内進学7,155人 進学率41.7%(全国42位、特に男子37.9% 全国45位)
 過年度卒業者を加えた8,257人の内県内進学3,995人(48.3%)、県外進学4,262人(51.7%)
 就職の場合・・・県内就職3,199人(61.7%)、県外就職1,985人(38.3%、全国10位、1989年37.6%)
  ↓
 一人当たり県民所得と大学等進学率は高い相関関係がある・・・進学率は低く、県外大学に流出

5)就業構造の変化と特徴
■生産年齢は毎年1万人以上減少の見込み
 第一次産業・・・1920年53.8%→2005年4.8%
 第二次産業・・・1920年20.5%→2005年26.1%
 第三次産業・・・1920年23.7%→2005年69.1%

■2005年熊本県の就業者数873,871人
 1995年の897,965人がピークで減少基調
 過去10年間は就業数のマイナス幅が小さい→積極的な企業誘致の効果?
 第一次産業就業者を第二次や第三次産業で吸収
  ①全国を大きく上回っているもの・・・農業、医療・福祉
  ②やや上回っているもの・・・建設業・公務
  ③大きく下回っているもの・・・製造業

  ※従業者数が増加した業種上位10(H13-18年:熊本県)
   1位 老人福祉・介護事業  増加数 5,941人
   2位 労働者派遣業         5,093人
   3位 他に分類されない飲食料品小売業   4,937人
   4位 その他の社会保険等事業    2,865人
   5位 病院             2,226人
   6位 自動車・同附属品製造業    2,002人
   7位 他に分類されないその他の小売業   1,445人
   8位 特殊産業用機械製造業     1,297人
   9位 保育所             861人
   10位 郵便局             787人
    (総務省「事業所・企業統計調査」より)


※第一次産業・・・全国レベルでは強い、野菜・果実の全国優位性、農業全体で3000億円、基幹従事者数の減少と従事者の高齢化

※第二次産業・・・1980年代以降工業の強化、不況期の建設業のウェートの増加と近年の公共事業の削減による低下

※第三次産業・・・産業構造内のウェートの高さ、サービス業・不動産業の絶えざる増加、政府サービスの強さ



最後に、「所得循環」という観点でみた熊本の産業構造についてお話がありました。

この説明で、なぜ福岡が一人勝ちするのか、なぜ熊本が県民所得が低いのかが何となくですが理解できました。

ほんとは、ここが一番のポイントなのですが、文章では表現できにくいので、割愛します。

でも、キーワードは「卸売業の重要性」なんです。

福岡は「卸売業」が強い・・・「流通消費都市」の先端を走っている。
熊本は「卸売業」が弱い


県内への所得循環を良くするためには、「卸売業」の存在がとても重要なんだそうです。

「流通」とは・・・不生産的、人・モノ・金が集まる、稼げる


産業構造ならびに都市の特徴は傾向として流通サービス経済化と「流通消費都市」へ
・産業構造・・・第三次産業へ(生産性に対する寄与率の高さ)
・前期的商業都市→生産工業都市→流通消費都市へと変遷


「流通消費都市」としての成長成熟度は、熊本はすでに鹿児島から追い抜かれている。
(新幹線開通のおかげ?)

↓↓↓↓

これらの事をすべて踏まえて、今後の熊本について

来年の新幹線開通後は早い段階で熊本が福岡商圏との一体化・競合(新幹線開通前1時間25分⇒開通後35分)の場面が出てくるだろうとのことでした。
また、宮崎へのルートが熊本経由に加え鹿児島経由(新幹線開通前4時間22分⇒開通後1時間20分)というルートも出てくるので、熊本の中抜き現象が生じる???


「集中」と「分散傾向」
①南九州の営業拠点である熊本から福岡へ引き上げ?・・・集中
②拠点は鹿児島へ?・・・分散


熊本の都市機能の低下の可能性?



この講演に参加した経営者さん達全員、「熊本のぼろ負け」を感じました


いろいろと先生からの研究分野からのご意見もありました。

私は熊本への新幹線開通後は「お金」は「入り」よりも「出」が圧倒的に多くなると思っていました。
つまり、新幹線とともに「流出」するだろうと思っていました。

それを、立証するような内容だったので、「やっぱりなー」という気持ちと、「じゃ、どうする!!」という思いになりました。


新幹線を歓迎ムードでおられる方々にとっては、水を差すようですが、現実的に、「マーケティング」が県レベルできちんとなされていないと思うし、戦略もいきあたりばったりのような気がします。

その点も、福岡の「戦略」との大きな違いがあるということを先生は指摘されました。

目先の企業誘致では一部の所得循環にとどまって、県民全体の所得循環に寄与していないこともわかったし、第一次・第二次産業へ力を入れている割には、域外収支はマイナスが継続しているし・・・。

熊本県、どうするの!!
って、感じです。


こういう学者さん達のお話も時には聞かないといけませんね。


客観的データがある意味ショック!です。
今後は、そういうものに目を向けていかないと、掛け声だけでは何も変わらないという事が良くわかりました。


また、私たち個人としては何をすべきなのか!という事も考えさせられました。


長崎の税理士業界でも、どんどん福岡への進出がなされています。
つまり、福岡だけでなく、熊本を商圏として見据えていることになるのでしょうね。


長崎の病院が、熊本を商圏として設定して、その準備を着々と進めているという話も聞きましたし。
地元の同業者だけではなく、いつの間にか同じ土俵にレベルの高い福岡の同業者が立っていたりするかもしれませんね。

だって、35分ですものね・・・。
車で移動するより早いって話もあるし・・・。
高速バスにも影響あるでしょうね・・・。


さぁ、私たちはこれからどういう戦略を持って戦えばいいでしょうか・・・。
もう、来年です。
時間はありません。




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